【1月号特集:わたしと書店】『橙書店』に出会えたから、今の私がある。(お詫びと訂正)

お詫びと訂正

先日、12月25日に発売された『シティ情報くまもと1月号』の23ページ内に記述の誤りがございました。

 

(誤)

「東北大震災のチャリティー企画として伊藤比呂美さんの説明会をやった時は、3日前に新聞告知をしただけだったのに、当日はたくさんの人が来てくれて。遅れてきた吉本さんを一番前に案内したのを覚えています」とほほ笑む店主田尻さん

 

(正)

「東北大震災のチャリティー企画として伊藤比呂美さんの朗読会をやった時は、3日前に新聞告知をしただけだったのに、当日はたくさんの人が来てくれて。遅れてきた吉本さんを一番前に案内したのを覚えています」とほほ笑む店主田尻さん

 

謹んでお詫び申し上げ、ここに訂正いたします。(2018.12.26)

 


 

人と本を結ぶ本屋という場所は、時として人の人生を変えるほどの出会いをもたらすこともある。エッセイストで作家の吉本由美さんも、本屋を通じてかけがえのない出会いを得たひとり。吉本さんにとって唯一無二の場所だという『橙書店』でお話を伺った。

Profile /吉本由美さん。1948年熊本市生まれ。作家・エッセイスト。セツ・モードセミナー卒業。「スクリーン」編集部、大橋歩さんのアシスタントを経て雑誌の世界へ。「アンアン」「クロワッサン」「オリーブ」などの女性誌でフリーランスのライターおよびインテリア・スタイリストとして活動後、執筆業に専念。近著に「キミに会いたい 動物園と水族館を巡る旅」「するめ映画館」「みちくさの名前。」ほか、著書多数

 

『橙書店』に出会えたから、今の私がある。

 

東京で40年以上活躍し、7年前生まれ故郷である熊本に帰ってきた作家の吉本由美さん。東京を発つ前に挨拶に行った先で“熊本に帰るなら、ぜひ『オレンジ』の田尻さんを訪ねたらいいよ”と言われて以来、ずっとその存在が頭の中にあったという。「初めて『オレンジ』を訪ねた日、あいにく久子ちゃんはいなくて。店の中もお客さんでいっぱいだったから、そのまま帰ってきちゃったの。それからしばらくして今度は、新聞に『橙書店』で伊藤比呂美さんの東北大震災のチャリティートークショーがあるという記事を見つけて、それをきっかけに伺ったのが2度目かな。店はイベント仕様だったから、その時も本屋の佇まいを見ることはなくてね」と吉本さん。「その後、改めて『橙書店』を訪れて本屋の形を見た時に、“あぁ、こういう店が熊本にあるんだな”ってホッとしたというのが正直な気持ちかな」と吉本さんは安堵の表情を浮かべる。

「本棚を見て“好きなものがあれもある、これもある”って思える書店ってなかなかないから、趣味の近い人なんだなって感じてね。そこから時々足を運ぶようになったら、お茶も飲めるし、食事もできるし、お酒も飲めるし、ということがわかって。お互い猫を育てているという共通点もあったから、営業が終わるまで飲みながら待っていて、一緒に帰ったりね」。吉本さんは、田尻さんのことを“月友達”でもあるという。「月がきれいなときって、誰かに言いたくなるじゃない? そんなことを心置きなく言える友達! 」と吉本さんは声を弾ませる。

 

 

吉本さんが本を買うのは大抵『橙書店』と決まっていて、まずは背表紙のタイトルを見て、装丁を眺めては、質感を確かめる。 

ネット注文ばかりでは目に留まることのない、知らない世界の本もここなら本の方から呼びかけてくれるようなのだという。そんな吉本さんに本との付き合い方を尋ねると「お風呂にはお風呂用、リビングにはこれ、寝る前は顔に落ちて痛くない文庫本、という風に洋服と同じでTPOがあるよね。とはいえ、家には積読本が何冊もあるから、なるべくそれを読むようにはしているんだけどね、つい新しいのも買っちゃうの(笑)」。「よみかけの本なんかもね、再び読み始めるとその世界観がうわぁっと立ち上がってくるのも面白いし、読み終わりたくないほど面白かった本は、残り少なくなってくると同じ行を何回も読んじゃったりするよね」と吉本さんはいたずらに笑う。 

東京暮らしが長かった吉本さんにとって、熊本は人間関係も真っ新だった土地。そんな中、田尻さんの店に出会い、ゼロから自分の世界を構築する喜びを感じているという吉本さん。「東京に居たところは、仕事仲間が気がつけば友達のようになっていたけれど、今は自分からこの人と友達になりたいと思って行動するの。それが楽しくて“ 私も友達が作れるんだ! ”ってやたらとうれしくなったの。そんな繋がりを得られたのは『橙書店』のおかげ。このお店がなかったら今の私はここには居ないわ」。その言葉に人と人、人と本とをつないできた『橙書店』の存在を思う。吉本さんにとって『橙書店』とは、本を通じて新しい明日を紡ぐ場所なのだ。

(シティ情報くまもと2018年1月号本誌掲載)

 

大通りから一本路地に入ったビルの2階に店を構える『橙書店』。小さな空間には店主が選んだとびきりの本や雑貨が並ぶ。初めて訪れてもどこか懐かしさを覚える、まるでオトナの秘密基地のような空間だ

 

「東北大震災のチャリティー企画として伊藤比呂美さんの朗読会をやった時は、3日前に新聞告知をしただけだったのに、当日はたくさんの人が来てくれて。遅れてきた吉本さんを一番前に案内したのを覚えています」とほほ笑む店主田尻さん

 

 

 

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