【1月号特集:街と本】〜面白い街とは、良い本屋があるということ〜

12月25日発売の『シティ情報くまもと1月号』では、街と本を繋ぐ、本屋にまつわる人々の話をお届けしています。

今回はその特集から、熊本の街と関係の深い方と、書店にまつわるストーリーを描く「街と書店」企画より、面木健さん×長崎書店の話をご紹介します。

 

「面白い街とは、良い本屋があるということ」

 

 「僕にとって本屋は、気持ちをリセットする場所。を訪れた際には、必ずナガショ(長崎書店)に立ち寄るのが僕のルーティンです」。そう話すのは、現在は上通アーケード沿いの更地を活用し、『坂口恭平モバイルハウスプロジェクト』や『街中オアシス』などさまざまな催しの場を提供する『オモケンパーク』を手がける面木健さん。以前本誌で取り上げたアウトドア特集で、シティアウトドアの醍醐味を私たちに教えてくれた人物だ。

 

中学時代まで上通で過ごした、まさに街育ちのシティボーイだった面木さん。大学進学と同時に上京し、雑誌が盛り上がりを見せていた時代に、流行通信社が発行する媒体の雑誌編集に携わっていた経歴を持つ。そんな人生に寄り添う本や雑誌との繋がりは、幼少期から通っていた『長崎書店』から始まったという。現在は、雑誌編集で培ったエディター目線を通して街づくりに携わる面木さんの『オモケンパーク』プロジェクトと、長崎書店に共通するのは「新しい挑戦をし続ける」ということ。その想いが今、上通という街を動かそうとしている。

 

 

「街全体を作るなんて大それたことは思っていないけれど、エディター目線で街づくりに関わっているというのはありますね。僕自身が繋ぎ役(ハブ)となり、何かをされている方と何かを求めている方の間を取り持つことが好きなんです。まったく違う分野同士の人が繋がると面白いことが起こる。そういう事を一つの場所に落とし込んで、オモケンパークを作っていきたいと思っています」。

さまざまなコンテンツ()が集まって、それぞれの個性を発揮しながら一つの街を形成する。エディターとしての視点と、街づくりに関わる者の視点を持つ面木さんから見ると、いわば街も一冊の雑誌のようなものかもしれない。

「例えば上通という街には、歴史のある店が要所要所に楔を打っているように点在しています。これからは、老舗と新しいものが交わるような場所ができると、街全体がさらに面白くなるんじゃないかな」。

そんな想いから生まれたのが、かつて上通アーケード沿いに建っていた『オモキビル』が震災で解体を余儀なくされ、更地となった土地を活用した『オモケンパーク』という試みだった。これまでの約2年間、モバイルハウスの設置や各種イベントが話題を呼び、大掛かりな建物が無くともやりたいことを実現できる、必要最低限にしたからこそ、大切な物を光り輝かせることが出来るということを体現した。

 

面木さんにとっての良い街・面白い街の判断基準は、どこにあるのだろうか。そんなふと浮かんだ疑問に返ってきた答えは、「良い本屋があるかどうか」ということだった。ここ数年来話題のオレゴン州ポートランドにある『パウエルズ』という本屋に面木さんが足を運んだ際、楽しめる要素の多い、密度の濃い時間を過ごせる場所だという印象を受けたそう。そこで、「熊本も街全体を通して、密度の濃い時を過ごせる場でありたい。そんな街になると「街に行こう」という人がますます増えるだろう」と感じたと話す。自分自身にとって魅力的な発見があると、そこにずっと滞在したくなる。誰しもそんな経験があるはずだ。そんな面木さん自身が密度の濃い時間を過ごせると実感するのが、上通の『長崎書店』だと語る。

 

僕なりの解釈だけれど、本屋の面白いところは、僕自身が抱えている課題や、その時の精神状態によって選ぶ本がまったく異なるんです」。本屋は日々変化する自身の気持ちを写す、いわば “自分の心のリフレクション(見つめ直す機会)”だという。「そして、僕がこういうことをやりたいと常々思っていることについて書かれている本を見つけて、同じようなことをやっている人がいるんだと気付かされます。また、本棚にある目的の本から目線を少しずらしてみると、セレンディピティ的(本との予期せぬ出会い)な魅力が隠れていることもあります。自分が求めている世界が、こんなにもすぐそばにあったんだという発見が嬉しいです」。

 

 

特に長崎書店の本棚は、「僕の好きなセレクトの仕方がしてある」という。社長の長﨑さんをはじめ、書店員一人ひとりのこだわり具合がよく見えると感じるのだそう。さらに、面木さんの思う長崎書店の魅力は続く。「ナガショは店内の一角をギャラリーにしているでしょう。そこに、長崎書店としてのメッセージを強く感じます。本来であれば売り場にできるスペースを、あえてアーティストの発信の場にしている。人が行き交う街中にギャラリースペースを作ることの大切さを、長崎書店は身をもって説いているように思います。その、老舗店ながら新しい試みを行っていく姿勢を尊敬しています」。

長崎書店は本を提供している場所であると同時に、カルチャーを発信している。そんな、常に前を見据え続ける長崎書店と、長崎書店がある上通をより良い街にしたいとの願いから生まれたオモケンパークとの、今後の理想の関係性を聞かせてくれた。「長崎書店で本を選ぶという濃い時間を過ごした後に、オモケンパークで本を読みながら心地いい時を重ねる。また本に限らず、街で購入した物をすぐに見たい、試したい、誰かと共有したいという人たちが集まる場にしたい。そうすると、同じ想いでそこに来られた方々と会話が生まれ、それがさらに広がってコミュニティができたり。そういう風に、街全体が賑やかになっていくと良いなと思います。物を売るだけのストリートではなく、そこから新しいカルチャーが生まれてくるような街。それがこれからの商店街の在り方だと感じます」。

歴史を持つものと新しい風を巻き起こすもの。それが交わる瞬間、新しいカルチャーが誕生する。それは決して大きいものではないかもしれない。けれど、それが街に根付いていくことによって、やがて大きなものになっていく。長崎書店とオモケンパークがこれから交わる先に何が起こるのか、ますます楽しみが募るばかりだ。そして、その二つを繋ぐは面木さんにとってどんな存在なのか、最後に尋ねてみた。

 

街中オアシスをはじめとしたさまざまな催しが行われ、どれも多くの人が訪れる人気イベントとなった

 

「本は、忙しい合間でも自分の目的地へ辿り着くヒントを与えてくれる。もっとその世界を深掘りしたければ、実際にその場所に足を運んだり、関連する人物に会いに行くこともできる。言わば自分のライフスタイルを求めて行くための地図みたいなものかもしれない。この本を読んだら次はこれ読もう、とアクションを起こすことも同じ。それはきっと、人生の道筋を辿っているのだと思います」。

 

面木さんが本の世界に触れる入り口は雑誌だった。アメリカのスポーツ、音楽、ファッションなどのカルチャーを紹介する『POPEYE』が70年代に創刊され、当時学生だった面木少年は、毎号毎号読み漁った。その時に感じたエディター目線で物事を見るという楽しさを、現在は街づくりというフィールドに落とし込んで活動している。

「自分が手にした本で学んだことを、友人や家族、そしてその次の世代に繋げる。良い本は時代を経ても読み継がれる。生活を豊かにするエッセンスとなるものは、時代や生活スタイルが変わっても、共通するものがあるのだと思います」。

 

本や雑誌がその想いや歴史を次の世代へ繋いでいくように、面木さんはオモケンパークで行われるワークショップやマーケットなど、各種イベントをエディター目線で企画編集することにより、次世代という年齢による括りのみならず、これからますます増えるだろう海外からの旅行者までをも巻き込んで、大きな輪を繋いでいこうとしている。上通という街のエディター・面木さんは、一歩どころか二、三歩先を見据えた構想を教えてくれた。

 

老舗の長崎書店と、上通の縁がわこと、これから生まれ変わるオモケンパークに共通するのは、「新しい挑戦をし続ける」ということ。「生まれ育った街がこれからも面白い、豊かな街であってほしい」。来春にはオモケンパークに、イベントスペースを残したまま、誰もが自由に出入りできる建物が完成する予定だ。面木さんと長崎書店が紡いだ絆がいま、街全体を動かそうとしている。まだまだ序章に過ぎない、ここから始まる新たなストーリーを、私たちは目の当たりにすることができるどころか、その登場人物になることもできる。無限の可能性を秘めた面白い街・熊本の変遷をこの目で見届けていこう。

 

(シティ情報くまもと2018年1月号本誌掲載)

 

 

そのほか、『シティ情報くまもと1月号』では、面木さんが “今読みたい本”と “記憶に残る本”をご紹介いただいています。ぜひ熊本県内の書店・コンビニ、または通販でお買い求めください。

長崎書店

住所

熊本市中央区上通町6-23

電話番号

096-353-0555

営業時間

10002000

定休日

なし

駐車場

なし

カード

http://www.nagasakishoten.jp/

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